スコアメーカーを使用していて発見した裏技を、備忘録も兼ねて記しておきます。
チェンバロの数字付き低音の表示と文字化け対応
チェンバロの低音部の下にはこのような数字や記号が入っていることがあります。
これは、ポピュラー音楽で使われるコードネームに似たもので、低音部の音に対する度数を示しています。
数字が書かれていない箇所は、低音部の音に対して右手で3度上と5度上の音を弾きます。
数字が書かれている箇所は、例えば6と書いてあったら、低音部の音に対して3度上と6度上の音を弾きます。縦に5.6と数字が並んでいる場合は、3度上、5度上、6度上の音を弾きます。7は、3和音に7度上の音を加えること、つまり属7の和音ということになりますね。♯、♭はその数字の音を半音上げたり、下げたりします。実際には、これらの和音の中で右手のリズムを変えて、即興演奏する事が求められるようです。
ではこのような数字や記号をどのように書き込んでいったらいいでしょう。普通の音符入力ではできません。
スコアメーカーには歌詞を記入する歌詞リボンというものがあります。これを利用することにしました。
水色のリボンは1番の歌詞に相当します。
緑色のリボンは2番の歌詞に相当します。
こうして数字付き低音を表現することができました。
♮に問題が発生した
ここで問題が発生しました。
数字付き低音には当然 “♮” もあるわけです。
右のように♮があります。
スコアメーカーの楽譜では正しく表示されています。
これが、PDFに変換すると右のように? マークに変わってしまいます。
これは、♮が環境文字で、PDFに変換するときに文字コードが存在しないので、変換できない?文字になっているということになります。
♯と♭は正しく変換されています。
なんとか表現したいので、ちょっとしたトリックを使いました。
五線の中のナチュラルは正しく表示されています。なのでこれを使うことです。さらにマスクを使用します。
右のように追加の音符を記入します。音符の長さは小節の幅によります。ここでは8分音符がいいでしょう。
問題の部分には♮を入れておきます。
追加した音符を選択します。ナチュラルは選択しません。
選択した音符のプロパティーを開きます。
「マスク」にチェックを入れて表示しないようにします。
「発音」についているチェックをはずして演奏されないようにします。
これで右のように♮が表示されるようになりました。このナチュラルはPDFに正しく変換されます。
PDF の環境によっては、♯、♭も環境文字とみなされて、正しく表示されないことも考えられるが、この方法ならば対応できると思います。
ハープのペダル記号を楽譜に記入する
ハープを使っている曲のスコアにハープのペダルに関する記号(ペダルダイアグラム)があり、これをスコアメーカーで表現する必要にせがまれました。
ハープのグリッサンドの前にあるペダルダイアグラムと、その後ろにあるF♭、C♭という記号です。
この説明は次のページにありました。
ハープには、1オクターブに7本の弦があるため、半音を出すにはペダルを操作します。
右のハープのペダルも7本あり、CからBに割り当てられていて、それぞれ3段階にセットするようになっています。中間が♮、上段が♭、下段が♯になるようです。上段で弦を緩めると半音下がり、下段で弦を張ると半音上がると解釈できます。
ペダルダイアグラムの役割は、このペダルの位置を視覚的に瞬時に見分けることだと思います。特にグリッサンドのときは、このダイアグラムがないと演奏不可能ではないかと思います。
F♭、C♭といった記号は、ペダルの位置が変わる部分だけ示します。
ハープペダルは、写真のように左足3本、右足4本あり、左足のペダルは左から、D,C,B、右足のペダルは左から、E,F,G,A に割り当てられています。順序が CDEFGAB でないのは、構造上の理由があるからなのでしょう。
これに対応してペダルダイアグラムも、中心線を境にして左側が D,C,B、右側が E,F,G,A になっています。
これで G-mol(ト単調)の旋律的短音階上行のペダルダイアグラムを表すと右のようになります。
これらのハープのペダルダイアグラムや記号は、Steinberg の Dorico という楽譜作成ツールには簡単に表示する機能があるようですが、私の使っているスコアメーカーにはありません。そこで私は独自の方法で実現することにしました。
ペダルダイアグラムはPhotoshopでで作って楽譜に張り付ける
ペダルダイアグラムはPhotoshopで作り、スコアメーカーの「画像入力」機能で楽譜に張り付けます。Photoshopで作る方法は次のページに詳しく説明しておきました。
ハープのペダルダイアグラムをPhotoshopで作成する(単純な図形を効率的に作成する) | レインボウ情報館 (nijinohashi.info)
スコアメーカーで、ハープの楽譜にペダルダイアグラムを張り付けた結果は右ようになります。
ペダルの変更だけを示す記号の表示はチェンバロのときと同じ方法で表現する
ペダルの変更だけを示す記号F♭、C♭という記号は、上記「チェンバロの数字付き低音」の表示と同じ方法を使いました。ここにも、環境文字♮がありますので、歌詞リボンの中に使えません。
CDEFGAB の音名は歌詞リボンに記入し、♯、♭、♮は、音符を記入して臨時記号をつけ、音符だけを「マスク」して「発音なし」にします。
音名を歌詞リボンに記入するには、全休符の小節でも音符を記入しなければいけません。この音符もマスクし、発音なしにします。
追加の音符を記入し、歌詞リボンで音名を記入して、後ろの音符に臨時記号を記入します。
CTLキーを押しながら対象の音符をクリックして、プロパティを開きます。
「発音」はオンなった状態です。
発音をオフにして、マスクをオンにします。
右下の「マスク表示」をオフにすると音符が消えます。
しかし、音名と臨時記号の間が離れすぎています。これを調整します。
調整には2つの方法があります。
1.臨時記号を移動する。
2.音名を移動する。
1.臨時記号を移動する方法です。
臨時記号を選択してプロパティを開きます。
オフセットに適当な数値を記入して確認します。
プラスが右に移動、マイナスが左に移動です。単位はT(五線の線間隔の10分の1)です。
ちょうどよい数値が決まって、調整ができました。
2.音名を移動する方法です。
右のEとDを右によせる方法で調整します。
歌詞リボンのE とDを選択してプロパティを開きます。
「縦オフセット」の数値を調整します。
プラスが右に移動、マイナスが左に移動です。単位はmmです。
調整した結果です。
右のAはまだ調整前です。
1.2.いずれか、あるいは両方を併用して調整していきます。
ここで注意することは、これらの記号を記入して調整した楽譜の段に少しでも修正を加えた場合は、この調整が崩れてしまって、再度調整しなければいけないことです。この調整は、楽譜作成の最終で行わなければいけません。
弦楽器のトレモロを美しく演奏する
弦楽器のトレモロを大人数で演奏するときは、個々のトレモロの数が異なって全体としてきれいな音色になりますので、これを再現するのに工夫が必要です。
ウォルフ・フェラーリの有名な「マドンナの宝石」間奏曲第一番に、弦楽器が一斉にトレモロで演奏するところがあります。
これに乗って、管楽器が劇的なメロディーを奏でます。
ここでトレモロ記号を加えただけでは、トレモロの粒が一斉に揃ってトレモロらしくありません。衝撃的な音になります。
そこで、パート毎にトレモロの数を少しずつ変えてみます。下のようにトレモロ記号を選択して、「音値」の数値をパート毎に少しずつ変更します。
これを全てのトレモロ記号について変更しなければいけません。一つひとつ変えていたらとても大変です。
そこで、少しだけ楽な方法があります。CTRLキーを押しながらトレモロ記号を選択して音値を変更します。上の図ではファーストバイオリンのトレモロ記号を選択した状態です。
こうしてパート毎に音値を少しずつ変えて演奏すると、美しいトレモロを再現することができます。
上の場合はパート毎に変えましたが、1パートだけ(例えばファーストバイオリン)でも、コピーしてファーストバイオリンを2パート、3パート作って、少しずつ音値の数値を変えることによって、美しいトレモロを再現できます。
マドンナの宝石を添付します。弦楽器のトレモロは中間部分です。
大譜表の高音部と低音部に連なる符尾を引く
大譜表の五線紙上に、右のように高音部と低音部に連なる符尾を引く必要があります。
これを解決するにはどうしたらよいでしょう。参考にしたのが次のページです。
KAWAI コンピュータミュージック Q&A 大譜表で、右手左手にまたがった連桁をつけたい
キーは「声部」と予想して、次のようにしてみました。
これが元の大譜表です。
つなげたい音符を選択してプロパティを開きます。
「声部」が「フリー」となっているところを、ここでは「声部1」を選択しました。
その結果、下のようにつながりました。なぜか理由はわかりません。