今年の台風12号は異常なコースをたどりました。その原因は寒冷渦(寒冷低気圧)にあります。
台風は通常西から東に進みますが、台風12号は小笠原諸島付近で進路を変えたあと、西向きに進みました。そして、18日午後7時ごろ、相模湾沿岸に様々な被害をもたらしました。
・小田原市石橋-湯河原町吉浜の国道135号では、高波で救急車を含む数台の車が立ち往生して、約10キロが通行止めになった。
・湯河原海水浴場の海の家12軒が高波で全壊、他にも湯河原、真鶴で高波による大きな被害が出ている。
・熱海のホテルで、高波により食堂の窓ガラスが割れ、夕食会場が大パニックになった。
など、これまでになかった高波の被害が続出している。
気象庁は、「これまでとは違った警戒が必要です」というように警告していました。各テレビ局の気象予報士もこれをそのまま繰り返すだけでした。でも、これではどのように警戒していいかわかりません。もっと具体的に何に警戒すべきかを伝えるべきであったと思います。具体的には高潮警戒とその地域です。
気象予報士試験のテキストから
気象予報士試験のテキストでは、台風による高潮の警戒としてこのように書かれています。
1.南側に開いた湾の西側を台風が北上するときは、進行方向右側前方(南東)では強い風が吹き寄せるため(吹き寄せ効果)高潮の危険性が大きくなる。
2.台風の進行速度が速い場合は、さらにこの速さが加わって高潮の危険度が大きくなる。
3.大潮の満潮時にはさらに高潮の危険度が大きくなる。
よくある例が、東京湾に向かって台風が進んでいる時の高潮の警戒です。
台風12号でも同じことが言える
今回の台風12号は、東から西に進みました。しかし、まったく同じことが言えます。
これは、28日午後6時の天気図を拡大したものです。
台風12号が、相模湾沖を時速45kmで西北西に進んでいます。
従って、相模湾沿岸は台風の右側になり、高潮の危険地帯になります。しかも、時速45㎞という早い速度で移動しています。
さらに高潮が大きくなったのは、この時、大潮で満潮の時刻でした。気象予報士試験テキストの3条件がそろった状況でした。
「これまでと違った警戒が必要」というあいまいな表現でなく、具体的に高潮の危険性をもっと徹底すべきだったと思います。台風が東から西に進んでも、今までと同じ予測はできたのです。