原発再稼働で今冬のエネルギー危機を乗り越えよう
専制独裁国ロシアのウクライナ侵略が長期化しています。欧米の民主主義各国はこれに対抗してロシアの経済封鎖を継続しています。ロシアはこれに対して、天然ガスというエネルギーを武器に西側民主主義諸国にゆさぶりをかけています。
2020年にドイツはロシアに対して、石油34%、天然ガス55%を依存しています。日本も石油の5%、天然ガスの9%をロシアに依存しています。そしてサハリン2の行方も見通せません。加えて、世界的にエネルギー価格の上昇が続き、今年の冬を乗り切るための見通しさえつきません。
こんな時だからこそ、安全性の確認のとれた原子力発電所を再稼働して今年の冬を乗り切る必要があるのです。
これから日本でもっとも懸念されるのは、原発から出る放射性廃棄物の処理です。処理できない放射性廃棄物はたまり続けています。これは早晩解決しなければいけません。これについても最後に考察します。
日本のエネルギー自給率はOECD36カ国の中で35位
次の記事によると、日本のエネルギー自給率はOECD36か国中35位で、2019年はわずか12.1%だそうです。1位はノルウェーの816.7%、北海油田があるからなのでしょう。
日本の原発再稼働を阻む「バカの壁」の正体、ロシアはほくそ笑んでいる | DOL特別レポート | ダイヤモンド・オンライン (diamond.jp)
自給率が低いのは、石炭・石油・天然ガスなどの化石燃料のほとんどを海外に依存しているからです。唯一国内で調達できる水力・風力・太陽光などの再生可能エネルギーへの転換は一向に進んでいません。時間もかかります。
このため日本のエネルギー自給率の改善は遅々として進みません。
ドイツも現在稼働中の原発継続に舵をとる気配
東日本大震災で福島第一原発が未曽有の被害を受けて以来、日本では原子力発電に対する風当たりが強くなりました。一時は日本国内の原発すべてが運転停止に追い込まれました。ようやく再稼働に踏み切れたのは、2022年8月現在、5原子力発電所7基のみです。
その裏には、原発反対派の根強い抵抗がありました。彼らは、水力・風力・太陽光などの再生可能エネルギーに切り替えればいいという甘い考え方を持っていますが、切り替えは容易に進むものではありません。原発とこれらの再生可能エネルギーの規模が違います。現在は、石油・石炭・天然ガスなどの化石燃料に頼らざるを得なくなり、その結果急激な温暖化による異常気象が進んでいます。
東日本大震災後に日本と同じく反原発機運が盛り上がったドイツは、年々原発を停止してきました。そして今年中に現在稼働している最後の原発3基を停止させる予定でした。ところが、ロシアからのガス供給停止などの嫌がらせを受けて、見直しの機運が高まっています。
ドイツでさえこのような状況です。日本も原発反対派にみられるような古い考え方は捨てて、現実を見なければいけません。岸田首相は「原発最大9基稼働」と発言しています。今を見据えた賢い選択と思います。
原発のリスクが低いことを再度見直す
東日本大震災の福島第一原子力発電所の事故では、原発事故の恐ろしさをまざまざと見せつけられました。しかしこの事故は原発そのものの事故ではなく、想定をはるかに上回る津波による電力系統の損傷によるものでした。その結果燃料のメルトダウンを引き起こしました。原子力発電所そのものの事故ではありません。そもそもこの時、この原発はは停止していました。
原子力発電所は、大地震にも耐えられるように設計されています。もともとリスクは極めて低くなっています。火力発電所や水力発電所の方がリスクは高いのです。ただし、ひとたび事故が発生すると被害は甚大になります。
原子力発電はもちろんのこと、火力・水力・風力発電にしても、太陽光発電にしても必ずリスクがあります。リスクゼロなんてことはありません。とりわけ化石燃料を使用する火力発電所は、温室効果ガス排出による地球温暖化、そして気象の大変動という形で具体的にリスクが顕在化しています。
原発は台風や水害はもちろんのこと、大地震にも耐える設計・建設がされており、極めてリスクの低い発電手段です。東日本大震災の時は想定外の津波でリスクが顕在化しましたが、これを教訓に大津波対策をとれば、さらにリスクの低い発電形式となります。この点をもう一度見直す必要があります。
安全性の確認された原発を再稼働して原子力エネルギー比率を高め、異常気象を引き起こす元凶となる火力発電比率を下げることは、日本の、世界の将来にとって重要なことと考えます。
日本の原発再稼働を阻む「バカの壁」とは
先にも紹介した記事、
日本の原発再稼働を阻む「バカの壁」の正体、ロシアはほくそ笑んでいる | DOL特別レポート | ダイヤモンド・オンライン (diamond.jp)
で、日本の原発再稼働を阻む「バカの壁」とは、 原子力規制委員会(規制委)のことです。記事では次のように述べています。
規制委は本来、「原子力利用のための組織」なのだが、「原子力利用を阻止する組織」になっている実態がある。とりわけ再稼働のネックになっているのが、規制委が原発施設に「テロ対策」をしろと迫っている点だ。
規制委は、19年4月に「原発のテロ対策施設の完成が遅れた場合、運転停止を求める」と判断した。そのために再稼働は相当程度のコストが必要となり、またその準備期間を長引かせている現状がある。
(中略)
もちろん規制委は、福島第1原発のような事故を繰り返さないために、原子力の安全管理を最優先する理念を基に設立された組織だ。しかし、あくまで規制委は「原子力の利用」を前提とした組織であるのに、現状の規制委は「原子力の利用を阻止する動き」しかしていない。
そして、テロ対策は民間の電力会社に求めるものではないとして、次のように述べている。
そしてテロ対策というが、どんなにテロ対策をしても、ウクライナ戦争を見ても分かる通り、テロリストや敵国はこちらの裏をかいて攻撃をしてくるのである。現代のテロの知見などを民間電力会社が保持し得るわけもなく、また警備にも限界がある。
もちろんテロ対策は大切だが、これは国家が行うものだというわけです。
このようなわけで、日本では原子力規制委員会の厳しい規制で原発の再稼働が進んでいない。そこがロシアの思うつぼだというわけです。
無知と偏見で塗り固められたもう一つの「バカの壁」
私が考えるに、日本には原発再稼働を遅らせるもう一つの「バカの壁」があります。それは原発反対派です。
原発反対派は、何が何でも原発は反対と言い張ります。一つには原発は原爆を連想することもあるでしょう。しかし、原子力発電と原子爆弾は原料も製造方法も全く異なります。目的も全く異なります。一方は破壊であり、一方は平和利用です。これを一色たんにする原発反対派は、まさに無知と偏見に囚われた「バカの壁」です。
しかし、このような「バカ」が日本にはまだまだ多く存在します。これらの「バカの壁」を打ち砕くことは容易ではありません。しかし、原発反対派の圧力に屈していては、ロシアからのエネルギー依存を脱却できません。これこそロシアの思うつぼです。
岸田首相の言うように、安全性の確認された原発9基を再稼動すれば、ロシアから輸入する分のエネルギーを賄えるのではないでしょうか。ロシアから天然ガスが入ってこなくても今年の冬を乗り切れるのではないでしょうか。
将来の放射性廃棄物処理の課題解決に向けて研究者育成を
原発再稼動ができたとしても、日本には解決しなければいけない大きな課題があります。それは、原発の使用済み核燃料などの放射性廃棄物処理です。日本では処理は全く進んでいません。原発再稼動すれば増え続けます。
期待されているのが、青森県六ヶ所の使用済み核燃料の再処理工場ですが、工事の延期に次ぐ延期で本格稼働が大幅に遅れています。
再処理工場で使用済み核燃料を再処理したとしても、放射性廃棄物は残ります。この最終処分場も決まっていません。
北欧などでは地下深くに最終処分場を建設しているようですが、日本は地震が多いためこのような最終処分は考えられないようなリスクがあります。
福島第一原子力発電所の事故以来、原子力工学関係に進む学生が減っているようです。原子力工学の学生が委縮してしまっています。
より安全な原子力発電所の設計・建設、使用済み核燃料の再処理、放射性廃棄物の最終処理と原子力工学の研究には大きな需要があります。この需要にこたえる原子力工学の学生を増やしていかなければいけません。