バイオリンを始めたい

バイオリンは最も人気のある楽器です。しかしその敷居の高さから、やってみたいけれども敬遠されている方も多いでしょう。誰でも最初は初心者です。好きだったら飛び込んでみてはいかがでしょうか。

指先を使うことはボケ防止にも役立ちます。これは、バイオリンの巨匠が高齢でもしゃきしゃきとしているのを見れば納得します。将来に備えて今からバイオリンを始めるのは、この点からも良いことです。

コンテンツ

バイオリンを始めましょう

バイオリンを取得する

先生を探す

独学しようという方に

教則本をそろえる

知っておくと役立つ知識

練習場の問題

弓にはお金をかける

肩当について

ペグコンポジションを利用する

バイオリン取扱上の知識

バイオリン上達のコツ

正確な音程の習得は半音にあり

きれいなスタッカートの音は指と弓の準備にあり

音が大きく跳ぶときは必ず基準となる指でポジションを確認する

偶数ポジションを習得する

良い音作りにロングトーンの練習が有効

急がば回れ~速いパッセージはゆっくり練習する

指をしっかり抑える(叩く)練習が欠かせない

バイオリンを始めましょう

バイオリンを始めるにあたって、準備するのは次の3つです。 (1) バイオリンを取得する(付属品も含めて) (2) 先生を探す (3) 教則本をそろえる そして練習する場所の問題もありますね。この問題についても考えてみましょう。

TIPS  ストラディバリウスって高いのでしょうね

バイオリンと聞くとストラディバリウスがすぐに思い浮かびますね。もちろん何億円もするものがざらです。値段のつけられないものもあります。世界の三大名器といわれるものが、ストラディバリウス、ガルネリウス、アマティウスでいずれも高額です。 しかしこれらのラベルのついた安いものが世の中にはいっぱいありますが、それは「~モデル」という偽物です。これら名器が作られた17世紀の時代、この3人の楽器があまりにも有名なので、売れないバイオリン職人がストラディバリウスなどのラベルを張って売り出したという話を聞いています。 ちなみに、ストラディバリウス、ガルネリウス、アマティウスはラテン語名で、イタリア語では、ストラディバリ、ガルネリ、アマティとなります。

バイオリンを取得する

バイオリンと弓

バイオリンはピンからキリまであります。初心者はまず安いもので始めましょう。 楽器店に行って選ぶといってもどれがいいかわからないし、恥ずかしいですよね。バイオリンの上手な知り合いがいたら、一緒に行って選んでもらいましょう。最近はインターネットで買う方法があるのです。1万円以下で買える入門セットもあるのです。予算に応じてインターネットからゲットしてみてはいかがでしょうか。 さらにお薦めは、ヤフーオークションで落札することです。初級者はSUZUKIで十分ですから、「バイオリン 4/4 SUZUKI」で検索すると、1000円から出品されています。出品者の説明を見て、状態のよさそうなものを落札します。「ジャンク品」と書かれているものは絶対に手を出してはいけません。 少し上達してきて、も少し良いバイオリンが欲しくなったら、先生に選んでもらいましょう。独学などで、どうしても自分で選ばなければならない場合は、敷居の高いバイオリン専門店は避けるべきです。こういうところは、プロや音大生しか相手にしてくれなくて、素人には冷ややかです。初心者の買える安いバイオリンを置いていないこともあります。クロサワバイオリンは良心的で、初心者にも親切です。

バイオリンの弓の張り替えはいつもクロサワバイオリン

インターネットで選ぶとき注意点があります

① バイオリンのサイズを確認する
バイオリンには子供用から大人用までサイズがいろいろあります。
1/16、1/10、1/8、1/4、1/2、3/4、4/4(フルサイズ) があります。フルサイズの容積の何分の1になるかを表してします。フルサイズ以外は分数バイオリンと言います。子供から始める場合は、成長に合わせて左から順に買い換えていくわけですが、レイトスターターの場合は、4/4(フルサイズ)を選びましょう。もっとも、手の小さい人には 3/4 の方が楽なことがあります。大人になると指が固くなって正しいポジションに指が届かないこともありますから、あえて3/4を選択する方法もあるでしょう。ただし、音量はフルサイズに比べて小さくなります。
通常は、4/4 あるいはフルサイズであることを確認しましょう。

② 弓も必要
セットになっているものなら問題ありませんんが、バイオリン本体だけということがありますので忘れないようにしましょう。弓もバイオリンのサイズに応じた長さのものがあります。

バイオリンのあごあて

③ あご当てがあるか
バイオリンを正面から見て、左下にある黒あるいは茶色の丸い板状のものです。あご当てがないと、肩とあごで挟むのが厳しいです。ほとんどついているはずですが、一応確認しましょう。なければ別途買わなければいけません。

④ ケース付かを確認する
ほとんどがケース付ですが、中にはケースは別ということもあります。レッスンを受けにいくときはもちろん、家の中でもケースに入れて保管しましょう。バイオリンは壊れやすい楽器ですから。

⑤ 必要な付属品(アクセサリー)も必要
セットになっているものは必要なものが揃っていますが、そうでない場合、付属品としてさらに必要なものがあります。次のようなものです。
・松脂(まつやに、ロジン)
・チューナー(音叉でもよいが、最近主流になっている 442Hzのものを選びます)
・肩当(なくてもよいが、レイトスターターには肩当があった方が楽です。これは含まれていないことがほとんどです。別途自分に合ったものを購入する必要があります)
バイオリンの4本の弦を合わせるのは、2つの弦を同時に鳴らしてきれいにハモったところに合わせます。しかし慣れるまで時間がかかりますので、最初はチューナーを使うとよいでしょう。音叉はA(ラ)の音しかできませんが、チューナーは4本の弦の音を合わせることができます。
それから、最初は必要ありませんが、いずれミュート(弱音器)が必要になります。あの有名なサラサーテのチゴイネルワイゼンの第2楽章で、むせび泣くような感じを出すものです。安いです。

⑥ サイレントバイオリンについて
バイオリンの習いたての音は周りの人にはたまったものではありません。どうしても周りが気になって音をだすのはおっくうになります。ではサイレントバイオリンならば・・・と思いがちですが、待っください。サイレントバイオリンは、アンプに接続してロックのような演奏会場で大きい音を出すものです。初心者の練習用ではありません。間違えてサイレントバイオリンを注文しないようにしましょう。

⑦ 弦について
それから大切な弦が必要ですが、弦がついていないということはありえません。なぜなら、弦が張ってないと駒が立たず、バイオリンの表板と裏板の間にあって支えている棒(魂柱と言います)が倒れてしまうからです。

では、弦を買い換えるときの注意についてお話ししましょう。
もともとバイオリンの弦は羊の腸から作られたガット弦でした。しかしこれだけですと弱いものですから、最近はこれにアルミニウムや銀を巻きつけたものがほとんどです。さらにガット弦のかわりにナイロンやスチールが使われています。

ガット弦が一番良い音がしますが、値段が高いですし切れやすいです。プロの人はもちろんガット弦を使っています。スチール弦が安くて丈夫でよいのですが、やや硬い音になります。この中間がナイロン弦です。アマチュアでしたら無理してガット弦を使わないでも、ナイロン弦やスチール弦で十分と思います。

お薦めのバイオリン弦

ガット弦のもう一つの問題は、弦が伸びて音が下がりすいことです。特に弦を変えた直後は、弾いている間にも音程が下がっていくので、しょっちゅうチューニングをしないといけません。私は「ドミナント」というナイロン弦を愛用しています。音程は安定しています。

TIPS バイオリンはどんな木でできているの?

バイオリンは複数の木でできています。表板は松、裏板とネックは楓、指板は黒檀が使われています。松といっても「粋な黒塀見越しの松に…」にでてくるような曲った松ではなくて、エゾ松のような太い真っ直ぐな松です。高級品に使われているのは「ドイツ唐檜(とうひ)」と言われるアルプスの麓にある松です。昔からバイオリン制作で有名な北イタリアのクレモナも、近くに材料となるドイツ唐檜があったからでしょう。
楓も、高級品に使われるのは、ボスニア地方でとれる楓です。もちろん安いバイオリンはこのような材料は使えませんので、代用品ということになります。

TIPS バイオリンの弓は何でできているの?

弓の部分は柳の種類の木ですが、今はカーボン製もあります。弓の毛は馬の尾です。
高級な弓はブラジルでとれる「フェルナンブコ」という種類の柳の木から作られます。柳といっても、日本の土手にはえている柳とは全く違います。曲げに対する強度が強く、熱による反りがつけやすく、反りが戻りにくいので弓に適しています。これより安い弓は、やはりブラジルでとれる「ブラジルウッド」で作られます。(実はフェルナンブコもブラジルウッドの中のある種類のようです) しかし、バイオリンが盛んに作られた17世紀には、まだブラジルのこれらの木が発見されていませんでしたので、南アジアでとれる「スネークウッド」という木が使われていたということです。
最近はカーボン弓も普及してきました。弓は当たり外れが大きいですが、カーボン弓は比較的当たり外れが少ないと思います。低価格帯の弓を買うのであれば、カーボン弓を選ぶというのもよいかもしれません。
弓の毛は、モンゴル、カナダ、中国、日本の白い馬の尾が使われています。日本でいえば道産子タイプの馬で、いわゆる「白馬」ではないそうです。サラブレットの尾の毛を張ったら上手く弾けるということはないでしょうね。

先生を探す

手ほどきの段階から先生につくことをお勧めします。私の場合は、最初の半年ほど大学の先輩に手ほどきを受けただけで、あとは自分で本を見ながら練習していました。上達は遅いし、悪いところを指摘してくれる人がいませんので、悪いくせがついて、あとから矯正するのが大変でした。

では、どうして先生を探したらよいでしょう。
最近、楽器店でレイトスターターを対象にしたスクールを開催しているところがあります。ヤマハやカワイといった大手の楽器店はもちろん、都市であれば地元の楽器店で開催しているところもあります。

ヤマハ、カワイはインターネットで検索すれば見つけることができます。地元の楽器店も訪ねてみてはいかがでしょうか。ただし、この場合は個人レッスンでなく、グループレッスンです。グループレッスンの方が気楽で、仲間もいて励みになるという利点もあります。

一番良いのは、個人レッスンで丁寧に教えてもらうことです。これが上達が一番早いです。
しかし、バイオリンの先生の中には音大受験生でないと教えないという方もいます。初心者でも教えてもらえる先生を見つけることは難しいのが実情です。どなたかバイオリンをやっている人に聞いてみるのもよいでしょう。私がレッスンを受けている先生は、定年退職した人も教えています。演歌が弾ければいいという生徒さんもいるのだそうです。

TIPS 中指と薬指は仲がよい

中指と薬指は手の構造上離すのが難しくて、この2本の指の間を広げるのに苦労します。そのため音程が狭くなりがちです。これを克服するには、この2本の指の性質を知って意識して広くとるしか方法がありません。これは誰でもかかえている悩みです。あなただけではありません。

TIPS 細い指が有利か?

バイオリニストの指は、白魚のように細くて繊細だと思われている方がいると思いますが、そうではありません。バイオリンの弦は強く叩かないと良い音になりません。ですから太い指の方が有利だとさえ言えます。ダビッド・オイストラフというロシアの有名なバイオリニストの指は、太くてくしゃくしゃです。それでもしっかりした音程のきれいな音を出すのです。自分の指は太いからバイオリンには向いていないと思われていたら、それは全く問題ありませんから安心してください。

独学しようという方に

地方などで先生がみつからず独学せざるをえないという方もいるでしょう。その場合の注意を経験をもとに紹介しておきます。

まずバイオリン奏法に関する本ですが、次の本は基礎から高度テクニックに至るまで、わかりやすく説明されています。私もバイオリンを始める時に使用しました。

バイオリンや弓のの持ち方の基本から、相当弾けるようになった人でも読み応えのある内容です。「指導の原理」となっていますが、生徒が読んでも理解できる内容です。

イヴァン・ガラミアンはジュリアード音楽院の名教授で、とてもこわい先生だったということです。

教則本は、次の「教則本をそろえる」で紹介する中でも、篠崎バイオリン教本が一番よいのではないかと思います。練習の方法が細かく書かれていますので、これを忠実に守って毎日練習することで一応弾けるようになります。4巻まであって、順に進んでいくようになっています。

ただし、この練習方法の説明が先生の指導要領の意味合いで書かれているようですので、専門用語が時々出てきます。さらに奏法などは言葉だけでは正しく伝えられないことがあります。そのような場合は下記のDVDを参考にするとよいでしょう。


実践編となていますが、基本的なことから解説しています。この教材のよいところは、

  • 初心者(特にレイトスターター)にとって押さえるのが楽な第3ポジションから始めていること
  • 弓を弾きやすい真ん中の位置で短いストロークから初めていること

です。
レイトスターターには、第一ポジションは左手の姿勢がきついし、指の間隔も広いので押さえにくいのです。それがこの教材では楽な第3ポジションから入り、慣れてから第1ポジションにいくようになっているので、とりかかりやすいのです。私もレイトスターターに教える時はこのようにしています。

また弾く弓の長さも、最初から全弓(弓の長さ全部)を弾くのは難しいのですが、この教材では弾きやすい真ん中の部分を短く使って練習し、慣れてから全弓に移るようになっているので、挫折することはなくなるでしょう。

このような考えでこのサイトにも次のページを作りました。

レイトスタータのためのバイオリンメソード

また次のDVDは、「ヴィルトゥオーゾテクニック」となっていますが、基本的な演奏方法を解説しています。さらに上手になりたいという方には良いでしょう。


このように教材を揃えて勉強しても、独学ならではの落し穴があります。教材のとおりにやっているからよいと思っても、自分では気が付かないくせや、音程の違いがどうしてもあります。第三者に見てもらう必要があります。時々バイオリンを弾ける人にチェックしてもらう必要があります。バイオリンを弾けなくても、ピアノなど他の楽器をやっている人に見てもらうだけでも効果があります。第三者に見てもらえば、自分ではわからない不自然な動きや音程の違いに気が付くはずです。

とてもわかりやすくて役に立つ動画ができています。日本弦楽教会の中川さんという方が配信しているYou tube です。私もよく利用しています。教え方もとても上手です。

(46) Keithy’s ViolIn channel(日本弦楽協会) – YouTube

教則本をそろえる

教則本は先生の指定したものを使うのが基本です。先生(あるいはスクールの講師)に相談しましょう。スクールではグループレッスンの関係から、最初から決まっていることがほとんどです。

それでも先生につく前にちょっとという方に、初心者用の教則本を紹介しておきましょう。

篠崎バイオリン教本シリーズの中の最初の1巻

スズキメソード 鈴木鎮一 ヴァイオリン指導曲集(1) 新版[CD付] 全音楽譜出版社 楽器 教則本   (PR)

鈴木メソードの最初の1巻

この2つが日本の代表的な教則本となります。その他に

新しいバイオリン教本 1・2巻 音楽之友社  (PR)     

これもシリーズの中の最初の1・2巻


カイザーの3巻のうちの1巻目です。基礎的な力がつきますが、飽きやすいかもしれません。上の3つと併用するとよいでしょう。

ヴァイオリン音階教本 小野アンナ 著 音楽之友社 バイオリン 教則本     (PR)

音階は大切です。毎日の練習の始めに、時間をかけて音階練習をしましょう。これは人気のある音階教本です。

ひとつ頭にいれておいていただきたいことがあります。
バイオリンに限ったことではなく楽器全般に言えることですが、「固定ド法」に慣れる必要があるということです。特に合唱をやっていて「移動ド法」に慣れている人は、最初とまどうようです。

「移動ド法」は、調が変わったらその調の ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ドで譜読みしますが、「固定ド法」は、調が変わっても ドの位置が動きません。ト音記号の下第1線の音は、調が変わっても常にドです。英語ではC(シー)、ドイツ語ではC(ツェー)ですね。

TIPS ビオラの低音も魅力的!

手の大きな人でしたらビオラを始めてみるのもよいでしょう。ビオラはバイオリンより一回り大きいので、手の小さい人は苦労します。以前所属していた市民オーケストラで、バイオリンにビオラの弦を張ったビオラ希望者が入ってきましたが、音がビリついて、周りの人からたいへんなひんしゅくをかったことがありました。ビオラの長さに合うように作られている弦をバイオリンに張るのですから、どうしても緩く張らざるを得ず、音がビリついてしまうのですね。単にバイオリンより音が低いというだけではなくて、ビオラの音域はビオラでないと出せないものです。
ビオラを始めるのに一番苦労するのは、ハ音記号の楽譜に慣れるということでしょうね。ト音記号ではなくて、ハ音記号という楽譜が使われます。ト音記号の下第1加線の「ド」の音が、ハ音記号では第3線(真ん中の線)になります。それでもビオラの音色の魅力はすばらしいものです。弾く人が少ないので、どのアマチュアオーケストラでもひっぱりだこです。

知っておくと役立つ知識

練習場の問題

バイオリンの音は、最初はなかなか出ないものです。戸建の家や防音のしっかりしたマンションならばよいですが、そうでない場合、隣や上下階の人に気兼ねをします。どうしたらよいでしょう。

1つは、カラオケルームを借りるという方法があります。別にカラオケをしなくてもいいのです。

2つめは、部屋の中に防音ルームを設置する方法です。ヤマハやカワイから防音ルームを発売しています。ただし、60~70万円は覚悟しないといけません。1畳程度でしたら少し安くなりますが、弓が壁に当たって思い切って弾けません。圧迫感もあります。なるべく広めがよいでしょう。本気でバイオリンを始めたいのでしたら、思い切って購入するのもよいではないでしょうか。

ヤマハの防音ルームはこちらから

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カワイの防音ルームはこちらから

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バイオリンを練習するには、1.5畳~2畳タイプのものが必要です。弓を壁につかえずに自由に動かすには、横がどうしても150cm必要です。チェロの場合はこれより少し短くてもよいでしょう。

Amazon や楽天に出品されている簡易防音ルームは、狭い上に防音効果があまり期待できないと思います。

弓にはお金をかける

弓の値段はバイオリンの値段の10分の1と言われますが、それはバイオリンが何百万円もするような場合であって、安いバイオリンにはあてはまりません。良い弓を使った方が上達が早いです。バイオリンは安くても、弓にはお金をかけましょう。少し弾けるようになってきたら、先生に良い弓を選んでいただくとよいです。

バイオリンの弓には適度な軽さと強度が必要です。TIPS「バイオリンの弓は何でできているのでしょう」にあるような材料の代用品を使っている安い弓は強度が足りないので、それを補うために太くなり、バランスも悪くなります。弓の強度というのは、弓の毛を張ったときの反りがあるかないかということです。反りがなくて、弓と弓の毛が平行になるものは、弓が跳ねやすくバランスも悪くなります。いつまでもこのような弓を使っていると上達しません。1万円くらいのセット価格で買った弓は、音が出るようになったら早めに良い弓に買い替えるべきです。その時、カーボン弓を選ぶと当たり外れが少ないと思います。

私のバイオリン本体は20万円もしないのですが、良い弓を使った方がよいですと先生に勧められて、30年ほど前に30万円の弓を買いました。それから上達が早くなりました。

肩当について

昔は肩当というものは使いませんでした。バロック時代はあご当てもなかったと聞きます。
肩当は、多少なりとも裏板の振動を抑えて響きを弱める働きがあるので、できれば使用しないにこしたことはありません。生徒に肩当を使わせない先生もいます。ただしそれは、子供や若い生徒の場合で、レイトスターターの方は、肩当がないとつらいでしょう。

肩当にもいろいろありますが、よく使われるのは右の写真のようなものです。KUN(クン)と言われていて、ほとんどの人がこれを使っています。プロでも使っています。肩当も形状が進歩して体にフィットするようなものが開発されているようです。がっちりとバイオリンを支えるという点ではよいのですが、反面体の動きが抑制されるという弱点があります。

私は長年肩当なしで弾いてきました。しかし、バイオリンの裏板と肩の間で滑りやすく落ちそうになるのが怖いので、最近は右の Play on air の肩当を使っています。表面が布製で、空気を入れて少しふくらませて使います。滑り止めが大きな目的です。

ペグコンポジションを利用する

弦を張る糸巻が固くて調弦で苦労している人をよく見かけます。固いのを無理して回して弦を切ってしまうことがありますから、糸巻と穴(糸倉といいます)との間は滑りを良くしておく必要があります。ただし滑りが良すぎるとうまく止まりませんから、適度の滑りと固定の粘度の調整が必要です。
この適度の滑りと固定の粘度をだすために、石鹸とチョークを組み合わせて調整する方法があります。しかし慣れるまで試行錯誤しなければいけませんしめんどうですね。楽器店に「ペグコンポジション」という茶色や黒のクレヨンのような便利なものがありますから利用しましょう。糸巻の表面の光っているところへチョンチョンと付けていくのがコツです。付けすぎないようにしましょう。(次の「バイオリン取扱上の注意」参照)

バイオリン取扱上の知識

バイオリンを取り扱う上での知識や注意点を紹介しておきましょう。

駒の位置と立て方

駒はバイオリンの左右の孔の間のfの横線の位置に、バイオリンの表板に対して垂直に立てます。これが垂直でなくどちらかに傾いていると倒れる危険性があります。バイオリンの駒には弦の非常に強い力が加わっていますので、倒れた時表板を傷つけたり割ったりすることがあります。バイオリンをケースから出して弾く前に、必ず駒が垂直に立っているか確認しましょう。

弦の張り方

弦の片側をペグの穴に通して巻けばいいのですが、弦がゆるまない巻き方があります。それは巻き始めに弦を交差させるのですが、こちらにわかりやすい動画があります。

マイスター直伝!間違いないバイオリン弦交換

ペグの調整

ペグ(糸巻き、スクリュー)が固くて回りにくい時、無理やり回して弦を切ってしまうことがあります。昔は石鹸とチョークで調整していましたが、今楽器店に行くとコンポジションという便利な物があります。コンポジションによる調整のわかりやすい動画もあります。

マイスター直伝!自分でできるペグ調整

弦のチューニング

ペグを回して弦の音合わせ(チューニング)をするには、左手の親指と人差し指でペグを挟んで回します。このとき親指と人差し指だけでは不安定となり、バイオリンを外しそうになったり、回しすぎて弦を切ることがないよう。他の指をバイオリンのヘッドにからめて固定するようにします。

バイオリン上達のコツ

大学生になってバイオリンを始めた私は今でも先生に習っています。長年東京芸術大学の講師をされていた方ですので、教え方がとてもわかりやすく納得させられることが多いです。その先生からよく注意を受けて、しかもそれが上達のコツと思えることをいくつか紹介したいと思います。

正確な音程の習得は半音にあり

ご存じのようにバイオリンは、ギターやマンドリンのようなフレットがありませんので、自分で正確な音程を作らなければいけません。自分の耳が便りです。そのためには毎日音階を練習することが大切です。

しかし音階を正しく弾けたとしても実際の曲を弾く時には音程がはずれることがあります。音程がはずれる大きな原因は半音処理を正しく行っていないからだと私は思います。半音処理を正しく行うということは、半音のところで右の写真のように隣の指をしっかりとくっつけることです。

特に中指と薬指は仲が良いので、人差し指と中指をつけて、中指と薬指を離すパターンでは、意識して気をつかう必要があります。

そこで先生は、私の音程が悪い時に右のように下向きのくさびの印をつけてくださいます。これは、プロのバイオリニストもよく使っている方法で、半音を間違えそうなところには使うようです。

特に高音域のところでは、半音の位置が分かりにくくなりますので、この印をつけて注意をすると間違えません。
(数字は指番号です。人差指、中指、薬指、小指の順に、1,2,3,4となります)

これは隣の弦の時にも使います。隣の弦であってもくっつけるように意識して指を置きます。

半音はどうしてもあいまいになりがちです。意識して半音をとるというのが正確な音程づくりのコツと思います。

このことはビオラにもあてはまります。しかしチェロの場合はどうでしょうか。チェロは全て隣の指で半音をとります(つまり全音の場合は指2本分となる)のでこの考え方はあてはまらないようです。しかしチェロでも極高音域ではどうなんでしょう。今度チェロをやっている人に聞いてみます。

 きれいなスタッカートの音は指と弓の準備にあり

スタッカートは発音の直前にアタックが必要です。つまり弓を動かす前に弓の毛が弦上にあって、右手人差し指で圧力を加えて弾き出します。この時弾き出すのに合わせて左の指を押さえるときれいなスタッカートになりません。弾き出す前に左の指も弦を押さえた状態になっていなければいけません。

上の例ですと、最初のドの音を2の指で押さえて、弓はA線上に乗った状態でアタックをつけて弾きます。弾き終わると同時に3の指でソを押さえて、弓も素早くD線上に移動して準備をしてから弾き出します。また弾き終わると同時にドの音も同じように準備をして弾きます。スローモーションで見ると指の押さえと弓の移動、そして弾き出す時間がずれたように見えます。このようにしないときれいなスタッカートになりません。指を押さえるのと弾き出すのが同時であったり、移弦しながら弾き出すときれいなスタッカートになりません。私も先生に「素早く準備しなさい」とよく注意されます。

このようにスタッカートは準備時間が必要なため、次のような場合も注意が必要です。

薄く〇で囲んだ部分です。このスラーを音符のとおりに目いっぱいのばしていると、次のスタッカートを弾けません。準備のためにスラーの2番目の音は短くして次のスタッカートの準備に入らなければいけません。

スタッカート以外にも、スピッカート、マルテラートなどアタックを必要とする奏法では同じように指と移弦の準備が必要になります。

この注意は、ビオラ、チェロなど他の弦楽器にも共通です。

音が大きく跳ぶときは必ず基準となる指でポジションを確認する

高いポジションに大きく移動するときは、その音にとびつくのでもなければ、スライドさせるのでもありません。必ず基準となる指(1の指の場合が多いです)で正しいポジションの音をとって目的の音を弾きます。

右の例では3小節目の高いレの音を弾くとき、今第3ポジションにいますから、D線上の1の指で第5ポジションのシをとってから、2の指でE線上のレを押さえます。2の指でとびついたりスライドさせては音をはずします。
鉛筆でシの音と1の数字を書き込んでありますが、注意のためよくこのように書き込みます。

メンデルスゾーンのバイオリンコンチェルトにも、このように大きく跳ぶところがあります。2小節目の3の指で高いソを弾くとき、1の指で第7ポジションのミ(フラジオレットでとりやすい音です)をとってから3の指でソを押さえます。そのためにソの前に少し間が空きますがそれは許されます。音をはずすよりよっぽどよいです。

 偶数ポジションを習得する

バイオリンの左の指は、まず基本のポジション(第1ポジション)から始めて、次に第3ポジション、第5ポジションと奇数ポジションを習得していくことが多いようです。第2ポジション、第4ポジションといった偶数ポジションの習得は後回しになるか、あるいはできない人もいます。一応奇数ポジションだけで曲を演奏することができます。しかし、偶数ポジションを習得すると、ポジション移動や移弦が少なくなって楽に演奏できるパッセージもあります。さらに滑らかな指の移動により、きれいなフレージングを作ることができます。

バッハの無伴奏ソナタNo.6 プレリュードです。
上の4p.と書いてある部分は第4ポジションで弾くと楽に弾けます。むしろこのポジションでないと弾けません。
下も88小節目ぐらいのところで、2p.と囲ってある部分は第2ポジションで弾くと楽に弾けます。この曲にはこのほかにも随所に偶数ポジションで弾くと楽に弾けるパッセージがあります。速い曲では頻繁なポジション移動や移弦が難しいので、偶数ポジションを有効に活用すると演奏が楽になります。

これはビターリのシャコンヌの冒頭の部分です。1の指でファ#からソと第2ポジションに移動しています。そして、第1ポジションでは弱い4の指(小指)で押さえることになるシの音を、小指よりも強い3の指(薬指)で押さえることにより、フォルテを維持でき、ビブラートも良くかけることができます。そして3の指でシ→ラと再び第1ポジションに戻ります。このように同じ指で半音を利用して、奇数ポジションから隣の偶数ポジション、偶数ポジションから隣の奇数ポジションへと滑らかに移動するフィンガリングをよく使います。偶数ポジションを習得することにより、表現に幅ができます。偶数ポジションは早めに習得すべきです。

有名なワーグナーの「ニュールンベルクのマイスタージンガー」のこの箇所も、半音を利用して降りてくれば、楽に弾けますね。

1の指で第7ポジションのミをとって位置を決めます。あとは半音の箇所で指をずらして降りてきます。下に書いてある○Pはポジションを示します。

このテクニックはビオラにも適用されます。ビオラはバイオリンよりも指と指の間隔が広くなりますので、偶数ポジションを多用することで滑らかなポジション移動ができるのではないでしょうか。

良い音作りにロングトーンの練習が有効

コントロールのとれた太い良い音を作り出すのによい方法を紹介します。それはロングトーンの練習です。

最初ある程度の圧力をかけて音を出します。その大きさを変えないでゆっくりと弾きます。♩=40 にこだわらず、なるべく長く音を保ちます。一弓で20秒、30秒も保つ人もいるそうです。管楽器でも、安定した良い音を作るためにロングトーンの練習をするそうです。

弓の圧力と速さ、そして駒と指板の間の弓の毛の当たる位置には、お互いに関連があって、ロングトーンでこれをコントロールする能力がつくそうです。私は練習の前の5分間ほど、チューナーを見ながら針がなるべく動かないように注意して練習しています。音が良くなること間違いなしです。

 急がば回れ~速いパッセージはゆっくり練習する

モーツアルトにはこのようなパッセージがよく現れます。ヴァイオリン協奏曲第3番ト長調第1楽章の一部分、テンポはAllegroです。

このようなパッセージは速く弾けなければと、あせって何度もなんども速いテンポで練習しがちです。しかし先生からは、一音いちおんゆっくり練習しなさいと注意されます。スラーではなくデタッシェでゆっくり練習するのです。プロのバイオリニストでも、結局ゆっくり練習するのが近道だと言います。

先ほどの「ニュールンベルク・・・」も、最初デタシェで練習して、できるようになったらスラーをかけるとよいでしょう。

指をしっかり抑える(叩く)練習が欠かせない

左手の指は、指板をしっかりと押さえないと正確な良い音が出ません。よく「叩く」という表現をします。指を叩いただけで音がはっきりわかるぐらいに強く叩く必要があります。このようにしないと、16分音符の速いパッセージも、もやもやとして際立った音になりません。

この練習をするのに最適な教則本が、シュラディーク(Schradieck)と思います。

このようなエクササイズが永遠と続きます。

これは、最初のA線だけの練習ですが、2弦、3弦、4弦に広がり、音形も複雑なものになってきます。

最初はこれを、4音スラーでゆっくりと、音の出るくらい叩くことを意識して、一つの音形を何回も繰り返します。

私はこれは、ピアノで言えば「ハノン」に相当する練習と思っています。

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