どうしてリスクオフが円買いにつながるのか?

世界で何か大きな事件があったとき、「リスクオフで円買いがすすむ」とか、「リスク回避のための円買い」などと言われて、実際円が上昇(円とペアの他通貨の下落)しています。昔は「有事に強いドル」と言われてドルが買われていましたが、今はUSドルでさえ下落しています。そんなに「円」は安全で優秀な通貨なのでしょうか。納得ができません。

現在(2020年1月25日)、中国の河北省を発端として新型コロナウイルスの感染が拡大しています。ちょうど今中国は春節に入ったばかりで、これが感染の拡大に拍車をかけている状況です。日本でも2人の感染者が確認されました。この影響でリスクオフの円買いが進んでいるようです。欧米に比べると中国にはるかに近い日本、そして日本でも感染者が出ているにもかかわらず、どうして円が買われるのでしょう。理論的に考えたら理解できないこの現象、何か他に根拠がありそうです。

次のサイトでは以下のような説明がされていました。

リスクオフで円高(円買い)になる2つの理由を銀行員が解説

2つの理由とは以下です。

理由1:リスクオフでの円買いが投資家の間で共通認識になっているため

昔の「有事のドル買い」のように、今は何か大きな事件が発生すると、リスクオフを連想させるキーワードに即座に反応して「円買い」に進むということです。まず、システム的に組み込まれたプログラムが反応し、続いて、流れに逆らうまいとするプロのトレーダーが追随して円買いに走るというのです。

理由2:キャリートレードの巻き戻しが起こるため

キャリートレードとは、円などの金利の低い通貨で資金調達をして、それを外貨に換えて(円→外貨のFXが発生)、利回りの高い債券や株式で運用することです。(この銀行員の説明)

景気が順調の時はキャリートレードで運用していますが、大事が発生すると、リスクを抑えるためにこれらの資産を売却して円に換えるので円買いにつながるというのです。

要するに、リスクオフで円を安全通貨として買っている投資家は一人もいないということです。

理由2は納得できるとしても、理由1の「リスクオフで円買いの共通認識」がいつ・どうして生まれるようになったのだろうか疑問が残ります。

下記サイトには次の記述があります。

三井住友DSアセットマネジメント:リスクオフでも過度にドル安・円高が進行しない理由

リスクオフ(回避)で日本円が買われやすいのは、「対外純債権国」の通貨だからです。日本は2018年末の対外純資産残高が約341.6兆と世界一です。日本の投資家が、リスク回避で世界中に投資した資金を日本に戻せば、円高となります。また、単にこのような思惑だけで日本円が買われることもあります。

これによると、日本の投資家が有事に対外投資資産を日本に戻すので円高になるとうことになります。これも納得できます。上の理由2と同じ内容と言えるでしょう。

このことと理由2が続いた結果、上の理由1の投資家の間の共通認識が形成されていったと考えられます。

いずれにしても、円を安全通貨と思っている投資家はどこにもないということがわかりました。