ここでは、ポピュラー音楽のような親しみやすい曲の作曲・編曲を前提にお話しましょう。
最近は便利な楽譜作成ソフトが出てきています。ソフトの中で音を確認したり、演奏したりすることもできます。
2020年の新型コロナウイルスの飛沫感染防止のため、小・中学校の音楽授業で合唱ができず、代わりに作曲の指導が行われるようになっています。今後作曲の人気がますます高まることでしょう。
新型コロナ: 合唱より「作曲」、音楽授業に新潮流 コロナ禍で脚光: 日本経済新聞 (nikkei.com)
作曲・編曲をするのに必要な知識
作曲は思いついたメロディーを音符に表現すればよいので、楽譜の書き方がわかれば良いのですが、ある程度の知識があるとさらに多くの人に感動を与えるようになるかもしれません。
一方、編曲は楽器の知識や曲の進行など最低限の決まりを守る必要があります。全くの自己流では難しいでしょう。
作曲・編曲をするときに必要な知識は、和声学と対位法です。このうち和声学はどうしても必要です。対位法の知識はあればさらによいでしょう。
和声学を学ぶには
和声学とは、「声」という字からわかるように、もともと混声合唱のような合唱の曲を作るときの厳格な決まりで、ピアノなどで和音をつけるようなときには全く役立たない知識なのです。本格的な和声学の本は難解で、まず理解できないでしょう。
では必要ないかというとそうではありません。難解な和声学をピアノ伴奏で使えるようにわかりやすくしたのが次の本です。
[楽譜 スコア] 新版 実用和声学 -旋律に美しい和音をつけるために- 中田喜直 著 PR
ポピュラー音楽ではコードネームの知識が必要になります。ポピュラー音楽の楽譜を見ていると、C,F,G7,Cm,Fm,・・・といったコードが書かれているのがわかるでしょう。これがコードネームです。
ポピュラー音楽の作曲・編曲をするのでしたらコードネームを理解するだけで事足ります。このコードネームをわかりやすく解説しているのが次の本です。
ピアニストのためのコード学習帳 角聖子先生と一緒に学ぼう! (リットーミュージック・ムック) PR
「ピアニストのための」と書いてありますが、ピアニストでなくても役立つ本です。
対位法を学ぶには
対位法も作曲を志す人に欠かせない知識とされてきました。しかし、理解するのに非常に難解な知識です。
和声学が和音とその動きの知識であるのに対して、対位法は旋律(メロディー)の掛け合いに関する厳格な決まりについての知識です。
一つの旋律を一斉に奏でる日本の雅楽のように、旋律は一つだけでは面白くありません。主旋律を引き立てる対旋律(カウンターメロディー)が必要です。対位法は一言でいえば、このカウンターメロディーについての知識といっていいでしょう。
この難解な対位法をポピュラー風に解説しているのが次の本です。
さらに本格的にポピュラー音楽の編曲を勉強したい方には次の本は最高です。
財団法人ヤマハ音楽協会から出版されている上下2巻からなるもので、ポピュラー音楽について、何から何まで全て網羅されています。もう発売されていませんので中古でしか手に入りません。かなり高価になります。
作曲・編曲をするのに便利なツール
単に思いついたメロディーを書き記すのでしたら、普通の五線紙があればよいです。ピアノ伴奏をつけたいのであれば、ピアノ用の大譜表五線紙があります。さらにオーケストラに編曲したい場合は、何段もある五線紙があります。
音符の知識のない人は、歌を録音して誰かに採譜してもらう方法もあります。「シクラメンの香り」で有名な小椋圭さんは、ギター伴奏で歌を録音して、他の人に採譜してもらったという話を聞いています。
自分でピアノ譜やオーケストラ譜を作りたい人は、PCで使える便利なツールがありますので、活用すべきです。ツールを使えば、修正も簡単ですし、保存して再利用も簡単にできます。
楽譜作成ソフト
作曲・編曲をしようと思ったら、楽譜作成ソフトがあると便利です。
手書きの楽譜よりきれいですし、打ち込みも簡単、修正も簡単にできます。オーケストラ譜ならばパート譜も簡単に作成できます。
何よりも嬉しいのは、ほとんどの楽譜作成ソフトにプレイバック機能(再生機能)のあることです。作成した楽譜を演奏してくれます。特にオーケストラのような合奏譜の場合は和音のおかしいところを確認できて修正できます。
さらに音声ファイルにエクスポートできて、CDを作成したり、画像をつけてYouTube に投稿することもできます。
私が薦める楽譜作成ソフトを紹介しましょう。価格はいずれも税込みで、2021年3月時点のものです。
スコアメーカー
河合楽器の発売している楽譜作成ソフトです。
印刷された楽譜をスキャンして取り込む機能からプレイバック機能まで、ほとんどすべての機能が備わっていて良いソフトです。私も使用しています。たとえばこんなように音声ファイルにエクスポートしてYouTube にアップロードできます。
星空のピアニスト~スコアメーカーで演奏するリチャード・クレイダーマン~ – YouTube
Standard と Platinum があって、Standard は、16パートまでなどいくつかの制限があります。私はPlatinum を使用しています。上記YouTube の音声ファイルもPlatinum で作ったものです。
現在はバージョンアップされて、スコアメーカーZERO となっています。
スコアメーカーZERO の魅力は、打ち込んだ歌詞をプレイバックしてくれることと、オーケストラ譜を純正調で演奏してくれることです。私は試用版でこの曲を編曲してプレイバックしました。
北上夜曲 cover Scoremaker ZERO – YouTube
一つだけ私の作曲したものもあります。
スコアメーカーZERO 以前のバージョンは買取だったのですが、スコアメーカーZERO からは、月間ライセンスと年間ライセンス方式になりました。
スコアメーカーZEROシリーズ | KAWAI コンピュータミュージック PR
スコアメーカーZERO プラチナム
フル機能を備えています。
年間:1年目22,880円、2年目以降16,280円 月間:2,728円
スコアメーカーZERO スタンダード
16パートまでなど他にも制限があります。
年間:1年目15,180円、2年目以降10,780円 月間:1,738円
スコアメーカーZERO エディター
スタンダードの機能の中で、認識機能(PDFの楽譜などを取り込む機能)のないものです。
年間:1,320円 月間:132円
プロの間では、この後紹介するFinale や Sibelius が圧倒的に多く使われているようですが、それは歴史が古いためでしょう。私は機能の多さからスコアメーカーを薦めます。
いずれも一か月間の無料試用ができます。
必要な期間だけ使用することもできます。私は、買取で購入している前のバージョンで歌詞入りの楽譜を作成して、1か月間ZEROのライセンスを取得して歌を演奏してYouTube に上げるという使い方をしています。
Finale
作曲家・編曲家にもっとも多く使われていて世界標準とも評価されている楽譜作成ソフトです。現在、書店に並んでいる楽譜のほとんどはFinaleで作成されたものと言っていいでしょう。
驚くほど多彩な細かい機能を備えているため、初心者には操作が難しいかもしれません。しかし、利用しているユーザー数が多いので操作でわからないことがあったとしても、インターネットで検索すると、たいがいの操作方法がわかります。
こちらでプレイバック・サウンドを体感できます。オーケストラの管楽器・弦楽器の純正調の音色も体感できます。
Finale | フィナーレ – 世界標準の楽譜作成ソフトウェア | 日本語ポータルサイト (finalemusic.jp) PR
価格は、ダウンロード版が 55,815円と高めです。
クロスグレード版というものがあって、他の楽譜作成ソフトのライセンスを持っていると安く取得することができます。たとえばスコアメーカーPlutinum のライセンスを持っていれば、19,148円でライセンスを手に入れることができます。
Sibelius
これも世界中の作曲家・編曲家に使われている楽譜作成ソフトです。印刷された楽譜をスキャンして取り込む機能がついています。
楽譜作成ソフトウェア – Sibelius – Avid PR
本格版は16パートまでが、年間:11,700円、月間:1,200円
制限なしの完全版が、年間:23,500円、月間:2,400円
無料版をダウンロードできます。しかし、4パートまでなど、本格版に比べて制約があります。本格版の1週間の試用をすることもできます。
印刷された楽譜やPDF楽譜を取り込むには、別途PhotoScore(有料) が必要になります。
無料で使える楽譜作成ソフト
たいがいの楽譜作成ソフトが、機能を限定して無料版を提供しています。最初はこれら無聊版を使用するとよいでしょう。使い勝手を確かめた上で有料版を購入するとよいでしょう。
スコアメーカーのように1か月限定の試用版といったものがあります。
いくつか見ていきましょう。
Finale 無料版 Finale NotePad
上で紹介したFinale の無料版です。
Finale NotePad | ノートパッド – 楽譜作成フリー・ソフトウェア (finalemusic.jp)
8パートまでのスコア譜の作成ができます。
高品質の付属音源のプレイバックができます。
Music XMLというファイル形式でインポート、エクスポートができ、他の楽譜作成ソフトと楽譜の共有ができます。楽譜を紙に印刷することもできます。
PDFからの印刷楽譜の取り込みはできないようです。またwav、mp3などの音声データ出力もできないようです。
原則としてテクニカル・サポートは提供していませんが、ヘルプメニューからユーザマニュアルを見ることができます。
使用するにはシリアル番号が必要です。シリアル番号は、最初に起動した時に「シリアル取得」をクリックすることによって取得できます。
Sibelius 無料版 Sibelius First
4パートまでという制限があります。
上記Sibelius のサイトからダウンロードできます。
他の楽譜作成ソフトからも、MusicXMLファイルでインポート・エクスポートもでき、共有できます。スカメーカーで作成したアルビノーニのアダージョの一部分を4パートだけ取りだしたものをインポートしてmidiファイルに出力してみました。
楽器の音質はあまり良いとは言えませんが、しっかりとプレイバックしてくれますし、音声データ出力もしてくれます。楽器の音質の調整をすればさらに良い音にできるかもしれません。
Sibelius Firstのサンプルのプレイバックはきれいに聞こえます。おそらく実際の楽譜をプレイバックしているのではなく、実演奏の録音の音ではないかと思われます。
MuseScore
無料とは思えないほど多彩な、あらゆるタイプの楽譜に対応した楽譜作成ソフトです。パート数にも制限がなく、フルオーケストラのスコアも作成できます。
印刷された楽譜のPDFファイルをインポートできます。
PDFはもちろん、ほとんど全ての形式の音源にエクスポートできますし、MusicXMLファイルもエクスポートできます。
プレイバック機能もあります。
操作説明はヘルプ>オンラインハンドブックに日本語の説明があるのでわかりやすいです。
無料でこれだけの機能のある楽譜作成ソフトは他にはないでしょう。
作った曲に動画をつけてYouTube デビュー
ほとんどの楽譜作成ソフトには、wav mp3 といった音声データにエクスポートする機能があります。
せっかくですから、作った曲の音声データに動画をつけてYouTube に投稿したくなりますよね。それが簡単にできます。それには動画編集ソフトを使います。
Filmora
フィモーラと読みます。
動画編集ソフトでは、現在最も優れたものと思います。
【公式】Wondershare FilmoraX(フィモーラX)Windows版 – 動画編集・動画作成ソフトフィモーラウインドウズ版 PR
音声ファイルと画像(動画)ファイルをインポートして、マウスで簡単に操作して編集し、ビデオ用ファイルにエクスポートします。タイトルや字幕も入れることができます。
上で紹介した私のYouTube 投稿も有料版で編集したものです。最近編集したものを紹介します。
長崎の鐘 cover Scoremaker ZERO – YouTube
無料版がありますが、ビデオ用ファイルにエクスポートしたとき透かしロゴが入りますので、YouTube に投稿はできません。
Movavi Video Editor Plus
Filmoraより少し安く購入できるのがこちらの Movavi Video Editor Plus です。
動画編集が素早く出来るMovavi Video Editor PR
Filmora とほぼ同じ機能があります。
7日間の無料体験版がああります。有料版に比べて制約がありますし、ビデオ用ファイルにエクスポートしたとき透かしロゴが入ります。